トレンカディス(Trencadís)とはモザイクアート技法の一つで、破砕した不規則な形のタイルを材料としてモザイク装飾を施す技法です。スペインの建築家ガウディが設計したグエル公園(1984年世界遺産登録)やカサ・バトリョ(2005年世界遺産登録)の装飾には、トレンカディスのモザイクアートが多様され、建築空間に独自の色彩個性を演出しています。
さて、鎌倉市にある清泉女学院中学高等学校では、令和6年学校創立者【聖ラファエラ・マリア帰天100周年】にあたり、全校生徒1050人でご像を飾るモザイクアート装飾の記念事業が執り行われました。聖ラファエラ・マリア像が設置されている中庭には校舎と中庭をつなぐコンクリートのスロープ階段があります。生徒が登下校に利用するこの階段にタイルを生徒たちが貼り付けました。行事のためにスペインの工房から取り寄せた絵付けタイルです。9種のデザインでした。
余剰の絵付タイルで十字架を飾りたい
記念事業終了後、シスター大河内(聖心侍女修道会)の発案で、スロープ階段装飾に使用した余剰タイルで、新たに十字架が制作されることになりました。
十字架デザインの原案は、聖書福音の【五つのパンと二匹の魚】が彫り込まれた木彫りの素朴な十字架です。以前日本に在住していたスペインのシスターが彫られていました。記念事業実施日指導の際、修道会に宿泊させてもらった筆者(岡田七歩美)が、壁の十字架が心に留まったのをシスターに話したことがこの度のインスピレーションにつながったようです。
タイルを割ってモザイクアートをしてみたい
それだけで美しい絵付けタイルを割るのは勇気が要りますね。しかし、聖ラフェエラ・マリアはスペイン南部、コルドバ郊外のペドロ・アバド出身。スペインの大地に根ざすトレンカディス技法を採用することで、カトリック教会を彩る装飾の表現につながればという希望もありました。
余剰タイルの絵柄から【五つのパンと二匹の魚】の物語を描き出す組み合わせに、トランカディス技法ならではの工夫が入ります。二匹の魚部分はシスター大河内が別に制作し、十字架の中にある左右二つの十字架には、聖ラファエラ・マリア像のモザイクアート装飾時に生徒が制作したミニパーツを使用しました。オリジナルの素朴な木彫り十字架の雰囲気を継承するように勤めています。
クリスマスミサの講堂でお披露目
高さ約140センチ、トランカディス十字架モザイクアートは、クリスマスのミサで講堂にかけられました。モザイクアートの十字架からは、聖ラファエラ・マリア故郷スペインの風景が広がっているようです。
Hispalcerámica Azulejos Artsanos :スペインの絵付けタイル工房(スペイン人のシスターからお選びいただいた工房です。)
モザイクアート制作協力:ナホミモザイコ岡田七歩美
十字架支持体・設置計画制作協力:ジェクト株式会社
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