ローマ四大バジリカとローマの教会

モザイクを巡る旅

”神に祈り、神を讃えるということは、人間の気持ちの総合的な表現の表れです。”小畑紘一/ローマの教会巡り

四大バジリカ(バジリカ・マッジョーレ)・七大巡礼聖堂

ローマには、巡礼した信者が必ず参拝すべき四つの大聖堂(バジリカ・マッジョーレ)があります。さらに参拝することが望ましい三つの聖堂(バジリカ・ミノーレ)があり、合わせて七大巡礼聖堂と呼ばれています。バジリカ/Basilicaはもともと、ローマ帝国時代の市場や裁判所、集会所を兼ねた場所の建物洋式です。
キリスト教公認(313年・ミラノ勅令)を機にローマ帝国内で、聖堂などのキリスト教建築造営ブームが湧き起こります。コンスタンティヌス帝(272-337)はキリスト教を公認しただけでなく、教会建設を推し進めました。
コンスタンティヌス帝健立のバジリカは、皇帝の権威と神の栄光を具体的に表現するものとして豪華なもので、四大バジリカの内、三つのバジリカを建立しました。「迫害」と「抵抗」の歴史に耐えてきた一般キリスト教徒にとって「ミラノ勅令」はキリスト教の勝利の表れであり、地上における「神の国」到来の明るい兆しであったのです。

司教座

キリスト教公認された当初、教会はまだ個人の家(ティトゥルス)やアパート(インスラ)を礼拝用に改修した建物でした。たくさんの人が集まることができ、人々の声が隅々までよく響くバジリカ/Basilicaが教会建築モデルの一つとなりました。
大聖堂(バジリカ)は、”大きい”という意味合いではなく、司教区(住む地域の教団組織)を統括する聖職者、司教の座る椅子である【司教座】が置かれた聖堂のことを指すのです。
ちなみに、ラヴェンナの大司教館付属博物館には、象牙細工で飾られた【マクシミアヌスの司教座】があるのでラヴェンナ来訪の際は覚えておいてください。

ローマの四大聖堂(バジリカ・マッジョーレ・Basilica Maggiore)

ジュビレオ2025年(Giubileo 2025)

2025年はカトリック教会における「ローマ巡礼者に特別の赦しを与える年」聖年です。四大バジリカの聖なる扉が開かれ、世界中からカトリック信者がローマ四大教会に巡礼します。
25年に一度巡る聖年ですが、2016年はフランチェスコ教皇により、特別聖年とされました。

Basilica di San Giovanni in Laterano/サン・ジョバンニ・イン・ラテラーノ大聖堂(聖ヨハネ大聖堂)

ローマで一番古い聖堂。ローマ城壁内のかつてラテラーノ家の宮殿があった土地に隣接して立てられた。

Basilica di San Paolo fuori le Mura/サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂(聖パウロ大聖堂)

324年献堂式が挙げられ、八世紀後半には再度改修された。1240年ヴァッサレット親子により付け加えられた回廊にある、ねじれ柱のモザイク柱が美しい。

Basilica di San Pietro/サン・ピエトロ大聖堂(聖ペテロ大聖堂)

ミケランジェロの「ピエタ」像であまりに有名なサン・ピエトロ大聖堂、4世紀(329年)までに完成したが、1505年から1613年にかけて再建され、現在の新大聖堂が完成した。
イタリア留学当初1995年〜2000年代初めは教会にも広場にも気軽に入れました。ローマ観光時、疲れると大聖堂前に広がるサン・ピエトロ広場(ベルニーニ設計)の階段に座って、買ってきたパニーニ(サンドイッチ)を広げた頃が懐かしく思い出されます。その後サン・ピエトロ大聖堂入場規制が強化され、広場に入るだけでも数時間の列をこなさないとならなくなってしまいました。その頃は当然スマホもなく、カメラも持たずゆったり観光情緒に浸ったものでした。

Basilica di Santa Maria Maggiore/サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂(聖母マリア大聖堂)

「神の母はマリア」の説が認められたエフェソス公会議を記念し、建築された。ローマの聖堂に残る人物装飾のうち、最も古い作例のモザイクでがある。身廊壁に旧約聖書の物語が42場面(現存27)が描かれている。モザイクのテッセラの使い方に独自性がある。テルミニ駅から近い。ほど近いサンタ・プラセーデ聖堂と合わせてじっくり訪れたい。

五大聖堂

これら四大聖堂に五つ目(バジリカ・ミノーレ)の聖ラウレンティウス大聖堂(サン・ロレンツォ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂)を加えた五大聖堂は、キリスト教公認後の早い時期に建てられたもっとも重要な聖堂とされます。

三つの小聖堂バジリカ・ミノーレ

Santa Croce in Gerusalemme/サンタ・クローチェ・イン・ジェルザレンメ
訪ねた記憶があるが、写真資料はみつからなかった。
San Larenzo fuori le Mure/サン・ロレンツォ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂(聖ラウレンティウス大聖堂)
資料も記憶も薄いので、おそらく未訪問だろうか。
Basilica di San Sebastiano fuori le Mura/ サン・セバスティアーノ・フォーリ・レ ・ムーラ聖堂
アッピア街道沿いにある教会、未訪問。

ローマの教会・モザイク見どころ

ローマには数えきれないほどの教会がある。街を歩けば教会にあたるので、時間がいくらあっても足りない。ガイドブックに従えば効率よく、目的の教会巡りができるだろう。私は、自分の心が惹かれるままにその場へ足を踏み入れたいという気持ちが強かった。今のようにスマートフォンも無く、紙の地図に頼り迷いながら貴重な滞在時間を無駄に費やして来たかもしれない。モザイク芸術で有名な教会を時代の古いものから順番にリスト化した。

 Mausoleo di S.Costanza・サンタ・コスタンツァ聖堂 
四世紀の美しいモザイクが残る・サンタ・アニェーゼ聖堂に隣接


Basilica di Sant’Agnese fuori le Mura・サンタ・アニェーゼ聖堂(聖アグネス聖堂)
七世紀前半教皇ホノリウス一世により再建・

La Basilica di Santa Pudenziana/サンタ・プデンツィアーナ聖堂
アプスのモザイクは、390年頃の制作と考えられる。元老院議員プラデンス邸宅の後に聖女となった娘プラデンツィアーナに捧げた聖堂。プラデンスはペテロを自分の家に泊め、ふたりの娘プラセデスとプデンツィアーナがペテロの世話や迫害されていたキリスト教徒たちを助けたと言われている。
La Basilica di Santa Prassede /サンタ・プラセーデ聖堂
創建四世紀。現在の建物は八世紀末から九世紀初めに建てられたもので、モザイクも九世紀の作。

Basilica di Santa Cecilia in Trastevere/サンタ・チェチーリア・イン・トラステーヴェレ聖堂
創建九世紀の教皇パスカリス一世による。美術や建築に力を注いだ

Basilica di Santa Maria in Trastevere/サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂
創建四世紀中頃 1140年頃再建され、アプスのモザイクも同時期の作

La Basilica di San Clemente al Laterano/サン・クレメンテ・アル・ラテラーノ聖堂

サン・クレメンテ聖堂 モザイク芸術 ナホミモザイコ
La Basilica di San Clemente al Laterano 2024Nahomi Okada

あとがき

モザイク芸術と出会い早三十年。心の赴くままにイタリアを旅歩き、しがない個人旅行の許される範囲でスナップ風景を収めてきた。ローマの街並みと歴史の深さに飲み込まるままに撮影したイメージを、ろくに振り返る時間もないままに”今”となってしまった。あらゆる情報がその場で手に取れる時代が到来したが、老後に向けた忘備録としてリストアップすることで、これからの旅路に役立てたいと願う。視覚優先で活字をあまり読まないできたツケが人生後半にまわってきている。時間の許される限り、書物を追いながら心が動いて記録した足跡をまとめていきたい。参考文献をもとに執筆しているので無断利用を禁じます。本WEB上の写真は撮影者に著作権帰属します。

参考文献 【中世ヨーロッパの美術】浅野和生
ローマの教会巡り】小畑紘一
地中海都市紀行】名取四郎

ナホミモザイコのモザイクアート作品や実績に関するお問い合わせや、
仕事のご依頼につきましては問い合わせフォームよりご連絡をお願いします。

お問い合わせはこちら