イタリアのトスカーナにある【タロット・ガーデン】は、フランス人アーティスト、【ニキ・ド・サンファル(1930-2002)】が、タロットの世界を、モザイクアートの巨大彫刻作品で具現化した庭園です。20年かけ、私費を投じて作家本人が、モザイクアート作品の中に暮しながら作り続けました。
タロット・ガーデンのある田舎町、”カパルービオ(capalbio)”は、グローセットという海沿いの町の、丘の上に位置します。トスカーナ州に属しますが、ローマから車で日帰り遠足がちょうど良い距離です。
タロットガーデンと私
私は、ラヴェンナに代表される伝統的なモザイクだけでなく、”ガウディタイル”のような、アート性の高いモザイクスタイルも好きです。バルセロナは、2006年 視察。2016年には、ニキの、 【タロットガーデン】 を視察しました。タロットガーデンを訪れた当時、タロットの知識は無いに等しく、モザイクアートの細部や、造形的な構造物の自由な形に魅了されました。
ニキ・ド・サンファルの理想郷は、本などを通して知っていました。2015年に、集合住宅[スクーデリア]の仕事では、タロットガーデンや、ガウディからインスパイアされました。ニキの【タロットガーデン】は、グエル公園からインスピレーションを受けています。
「不安から逃れる事ができる幸せの聖域。人々が公園にやって来ては、時を忘れ無我の状態で、喜びを享受できる場所」(引用:2008年ニキ美術館発行[タロット・ガーデン])
私のタロット萌芽期
さて時は流れ、2022年頃。
タロットの起源はイタリア・ルネッサンス期にあるという話をイタリア人の友人から聞いたのが去年の夏過ぎ。ヴィスコンティ家のタロットカードなど、古い時代の絵柄がある事を教えてもらい、タロットへの興味が再び芽生えたのでした。手元にあった書籍、イーデン・グレイ著作[自在タロット]と、ライダー版タロットカードを取り出しました。2009年に買ったものでしたが、ただそれだけでした。
日本タロットブーム浮上???
このようにタロット熱が高まっている頃、趣味の図書館通いで、鏡リュウジ氏の書籍を何冊か手に取りました。タロットの解釈は、ルネサンス美術と、イコノロジー(図像解釈学)にも関係が深いことがわかり始めると、興味に拍車がかかるように、ユリイカの臨時増刊号で、[タロットの世界]鏡リュウジ氏責任編集の書籍が出版されました。日本に、数多くのタロット研究家がいたという事実にも驚かされました。(ここでは本の内容のご紹介は省略します)
不思議な巡り合わせで、タロット熱に火がついてしまったので、2016年訪問時に知識が足りなかったニキの【タロットガーデン】を、タロット解釈に沿って、今一度見直すことで、ニキの【タロットガーデン】への想いを深めたいと思います。
78枚のタロットカード
”タロット1式は78枚のカードから成り、56枚は4つの絵柄(スート・トランプの原型)を含んでいて、小アルカナと呼ばれます。残りの22枚は、【大アルカナ】として知られ、古い魔術、天文学や神秘科学などの世界最古の本から派生したと言われます。”(参考:イーデン・グレイ[啓示タロット])
大アルカナのモザイクアート彫刻たち
【タロットガーデン】は、タロットカードの中でより重要とされる大アルカナの22モチーフが、ニキのモザイクアート巨大彫刻として作品化され、広大な敷地内に存在しています。
ニキの住まいであった、スフィンクスの形を与えた 【Ⅱ 女教皇 The High Priestess】を始め、いくつかの作品は、内部まで作り込まれ、タロット彫刻の中に入って鑑賞することができます。色とりどりのミラーガラスを多用したニキ・ワールドへ身を投じ、幼心に満たされます。
”「シンメトリーや直線、直角が嫌い」なニキの作品の、アンバランスで、見る角度によって少しずつ表情が違うところは、まるで百面相のようである。”(引用:2008年ニキ美術館発行[タロット・ガーデン])
大アルカナ・22のタロット彫刻
では、22のモザイクアート・タロット彫刻を見ていきましょう!訪問日は、今にも雨が降り出しそうな曇りがちでしたし、スナップ撮りで写真の具合は今一つです。お許しくださいね。大アルカナ彫刻の下にある”言葉”は、2008年ニキ美術館発行[タロット・ガーデン]ニキ・ド・サンファルの画集から抜粋しています。
タロットガーデン内地図 各彫刻の配置図 (番号上の絵柄写真をクリックすると、作品写真と、ニキ手書きの説明が開きます・イタリア語タロットガーデンサイトへリンクします)
ニキとタロットカード
フランス人のニキは、マルセイユ版のタロットに親しんでいたのでしょう?6のカード、ライダー版では恋人たちは、[選択]のカードとなっています。
”精神的、肉体的に不安定だったニキは、自分の創作物を通して、生命のエネルギーや安らぎを求めたアーティストです。ニキとタロットカードの出会いは1960年代。精神的に落ち込んでいる時、自分を勇気づけ助けてくれるものとしてタロット占いをしていました。
「タロットカードは私の友であり、肌身離さず持ち歩き、常に見ています。」
「ひどい鬱状態に陥った時は、アーティストとしての仕事が治療として大きな役割を果たして来ました。」
「タロットは世界や人生の問題を理解するのに必要なもの。困難をひとつひとつ克服しながらハードルを乗り越えれば最後はパラダイスに到達できると考えられたのは、一番の手助けになった。タロットは私にとって道であり、人間はその道を行く旅人なのです。」と語っています。(参考:2008年ニキ美術館発行[タロット・ガーデン]ニキ・ド・サンファルの画集)
まとめ
【タロットガーデン】イタリア語では、イル・ジャルディーノ・ディ・タロッキ・Il Giardino dei Tarocchi と表記します。タロットガーデン世界観のご紹介、ニキが暮らした[Ⅲ 女帝 The Empress]の中や、表現が難しかったと語る[XIV 節制 Temperance]の中の礼拝堂などは次の機会に引き続きます。最後までご覧いただき、ありがとうございます。1日も早く、イタリアへ自由に渡航する日常が回復しますように願いを込めて。
Il Giardino dei Tarocchi
Loc.Garavicchio, 58011 CAPALBIO Grossetto(Toscana)
HP Niki Museum Gallery Yoko 増田静江コレクション
1974年タロット・ガーデン設計開始
1998年タロット・ガーデンオープン設計開始
data del visito 写真撮影:Nahomi Okada2016/4
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