― モザイクと空間芸術、そして魂の旅 ― 4

モザイクを巡る旅

サグラダ ファミリア 砕かれた光

⒈ 私を拒絶した場所・サグラダ

サグラダ・ファミリアの内部は
光で満ちています。


ファサードの、
色の少ない聖書の物語世界から
内部へ移動すると、


そこは、
生命を感じる
光としての色彩でした。


モザイクと同じように、
ステンドグラスもまた
光を砕き、
空間に色の影を落とします。


バルセロナでは、
すべての入場券を
イタリアで予約していました。


けれど
サグラダ・ファミリアだけが、
当日になって
私を門の外に立たせたのです。


私の購入したチケットが、
正式なものではない
と言うのです。

入場時間まで
あと五分。


もう無理かもしれない。

そう思ったとき、
セキュリティーの人が
「集合場所はここではない」と
教えてくれた。


半ブロック戻ると、
小さな代理店の前に、
百人ほどの人がごった返していました。

代理店のカウンターで
やっと私の名前を告げると、
ちょうど二つの班が
出発するところでした。

スペイン語のガイドツアーで、
ガイドが私を見て言いました。

「どっちの班?」

けれど私は、

自分がどこに属しているのか
分かりません。

カウンターで手渡されたチケットには、
「1」という数字。

「1」と答えると、
ガイドはぱっと顔を明るくして言いました。

「じゃあ僕の班だね!」

とてもテンション高く
喜んでいます。

サグラダ・ファミリア|東方三博士(マギ)


⒉ ガイドが示すサグラダの物語

私はサグラダ・ファミリアに
特別な関心があったわけではありません。

有名だから、
どのくらい出来上がったのか
見ておこう。

それくらいの気持ちでした。


ガイドは、
ファサードのレリーフを一体ずつ指さし、
全身を揺らしながら、
ガウディのキリストの世界を
熱く語り続けました。

本当は、
限られた旅の時間を
先に進みたかった。

けれど、
個人のチケットはソルドアウト。

ようやく見つけたのが、
スペイン語ガイドツアーでした。

これも旅の巡り合わせ。

私は、
「まあ、いいか」と思いながら
その情熱に付き合っていました。

サグラダ・ファミリア内部
柱は枝分かれし、
森のような空間をつくり出しています。


聖堂の内部に入ると、
柱が支える高い天井の空間は、
ただ光で満ちていました。


砕かれた光。
色に分かれた光。

ガイドが、
ステンドグラスを示しながら言いました。

「赤の光と青の光、
どちらが好きですか?」

午後だったので、
ステンドグラスは赤い側が
強く輝いていました。


私はその赤い光に
惹かれました。

そう言うとガイドは、
赤は地獄の側だと教えてくれました。

けれどそれは
否定的な意味ではないというのです。

火を通り、
再び生まれる。

そんな意味だと。

聖堂の中央には
四本の柱が立ち、
その先に
四福音記者の象徴が置かれています。

ガイドは、
福音がこの聖堂を支えているのだと
熱く語っていました。

けれどそれ以外には、
空間を遮るものは
ほとんどありません。

高さと色彩だけが残る、
大きな空洞のような聖堂でした。


サグラダ・ファミリアは、
柱の構造によって支えられています。

そのため、
空間としての美意識を
すぐに捉えるのは
難しいのかもしれません。

空洞感が
とてつもなく大きいのです。

モザイクの光と比べると、
私は
このファサードの物語には、
それほど興味がありませんでした。

けれど
「あと五分」と言いながら
一人一人の聖人を語り続ける
ガイドの情熱を通して、


私はやはり、
レリーフが好きなのだと
再確認できました。

私は
サグラダを見たというより、
ガウディの世界を
一時間半、
語ってもらったのです。

ツアーは、
結局二時間近くになりました。

一時間半ほど立った頃から、
グループの何人かは
静かに離れていきました。

それでもガイドは
中央のキリスト十字架の前で立ち止まり、
サグラダに込められた
ガウディの思想を
熱く語り続けていました。

もし彼がいなかったら、
私はこの教会を
さっと通り過ぎていたでしょう。


私はサグラダに、
情熱的なガイドによって
しばらく足留めされてしまったのです。

けれど不思議なことに、
その少しの受難のような時間の中で、

私の中には
静かな神聖さのような気持ちが
生まれていました。

旅の時間を
少し差し出したその瞬間、

思いがけず
神聖な気持ちが
生まれていたのです。

⒊ レリーフ・ステンド 光の拡散

私はもともと
ステンドグラスには
それほど興味があったわけではありません。

けれどガイドツアーのあと、
サグラダの地下にある美術館で、
ステンドグラスの制作工程を見ました。

ガラスを組み合わせ、
光の構成を考えながら
色を作っていく。

それまでの具象的な図像ではなく、
抽象的な色彩によって
空間を満たすという発想。


それを見たとき、
私ははじめて
このステンドグラスが
とても美しいものだと感じました。


そのとき私は、
グエル公園やサン・パウ病院からも
どこからでも空高く聳えて見えていた
サグラダ・ファミリアの
白い姿を思い出していました。

外の光を受けて、
静かに立ち上がっていた
あの聖堂のエネルギーを。

それは絵ではなく、
光そのものを作る芸術でした。

サグラダ・ファミリア内部
ステンドグラスの光が床に落ち、
空間そのものが色に染まる。



⒋ 空間が形づくる光

サグラダ・ファミリアの内部は
驚くほど高く、
ステンドグラスの色彩が
空間を満たしています。

けれどそれ以外には、
ほとんど何もありません。

空間は大きく空き、
聖堂の内部は
光のための空洞のようにも
感じられます。

ガウディが設計した
「石の森」というより

私にはむしろ

森ではなく
子宮のような空洞

に感じられました。

日本ではタイルは
壁面を衛生的に覆う
装飾として使われることが多い。

しかしバルセロナでは
タイルやモザイクが
空間そのものを形づくっています。

曲面、突起、色彩、光。

小さな破片の集合が
建築の表面を覆い、
空間を生きたもののようにしています。

それはまるで
貝殻や蜂の巣のような
自然の構造にも似ています。

ガウディは
自然界の形を研究し、
建築へと変えていきました。

砕けたものが
再び像を結ぶように、

私の芸術は
魂の再生を見つめています。


モザイクと空間芸術、
そして魂の旅は

そしてもう一度、
ラヴェンナへと戻ります。






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